2018年3月から約4ヶ月にわたってお届けした「Cup of Excellence Tour(以下、COE Tour)」はアートや音楽を愛する私たちSingle Oの遊び心満載の企画として、ペルーとコロンビアそして2つのブラジルのCOEコーヒーをお届けしました。
ラスト2つのステージを飾ったブラジルCOE。その国際品評会で昨年審査員を務めたSingle O Japan代表の山本酉のエピソードを交えながら、Single OのCOEへの想いをシェアしたいと思います。
1999年に記念すべき第1回COEが開催された生産国、ブラジル。昨年2017年はエスピリトサント州の街ヴェンダ・ノーヴァ・ド・イミグランテで10月に開催されました。その「ナチュラル部門」と「パルプドナチュラル部門」2つのカテゴリーで審査員を務めた山本のエピソードには、私たちSinge OがCOEを愛してやまない理由が隠されています。現在のスペシャルティコーヒーシーンを形成している大きな柱のひとつがCOEであることは誰もが認めるところでしょう。COEが存在することで毎年世界中のカッピングスキルを持ったロースターやコーヒー関係者が世界トップクオリティーのコーヒーの元に集結します。そこではカッピングを通して様々なディスカッションが交わされ、それぞれのコーヒーのクオリティーが厳正に評価されます。結果としてCOEはコーヒー生産に携わる人々の生活水準を引き上げ、その生産国の経済水準さえ引き上げています。
昨年のブラジルCOEでは、ブラジル全土に約30万いると言われる生産者から900のサンプルが届きました。審査員たちはエスピリトサントのリラックスした雰囲気とは対照的な真剣さで、まるまる1週間これらのサンプルと向き合いました。「この6日間で約80のサンプル、計700以上のカップをカッピングしました。(山本)」
それらのサンプルの中で山本の目を引いたのが、COE Tour最後にお届けした「Fazendas Klem」です。山本はこのコーヒーを「Super clean tropical fruit bomb(透明感が素晴らしく、いろんなトロピカルフルーツのフレーバーがぎっしり詰まっている)」と表現します。山頂エリアでこのコーヒーを育てる83歳のNagipe Viana Klemさんは、COE獲得の要因を「生産プロセスでエコイノヴェーションを実現したこと」と「Matas de Minasエリア全域に11の生産エリアを拡大したこと」だと話します。
朝から晩までカッピングとディスカッションが繰り返されるCOEですが、その多忙なスケジュールの合間に、今回審査員たちはCOE開催地近くにある2つのコーヒー農園を訪問する機会を得ました。「私たちが訪問したのは(結果的に)今回「パルプドナチュラル部門」で6位、「ナチュラル部門」で1位を獲得した生産者でした。エスピリトサント州で今回COEを獲得したのはこの2つの生産者のみでしたが、彼らの生の声を聞くことができたのはとても素晴らしい経験でした。(山本)」
パルプドナチュラル6位を獲得した生産者は審査員たちに、彼が58歳という年齢でいかにスペシャルティコーヒーにシフトする決意をしたかを語ってくれました。そして、つい最近まで彼にとっての優先順位は「クオリティー」ではなかったと正直に話してくれました。「私たちは今スペシャルティコーヒーを育てることを「(やりがいのある)仕事」と捉えていますが、それ以前はただ生き残るために必死なだけでした。」
彼はさらに「まさか自分のコーヒー農園に世界中からゲストが訪れるようになるとは夢にも思わなかった。」とも語ります。「彼のコーヒー農園はACE(Alliance for Coffee Excellence Inc./COEの運営組織)のウェブサイトにも掲載されているので世界中の誰でも彼の名前を目にすることができますし、今回の彼のCOEロットは日本でも提供されました。(山本)」
「COEプログラムがコーヒー生産者たちの人生を大きく変えています。より多くの生産者がいまやクオリティーが大切であることを理解してるのです。(山本)」
クオリティーの追求に加えて、コーヒーの生産現場ではテクノロジーが広く行き渡っています。多くの生産者はトレーサビリティーのためにITテクノロジーを利用しています。例えば、コーヒーの麻袋にはQRコードがつけられ、携帯電話があれば誰でもそのコーヒーの生産エリアや収穫時期、精製方法、生産者などの情報にアクセスすることができます。山本のようなロースターたちも、SNSなどのメディアを使って生産者と直接コミュニケーションをすることが可能です
「コーヒー生産者たちが私たちの人生を変えています。私はコーヒー業界に入って10年ですが、10年前と今を比べてみると、私たちが飲んでいるコーヒーの品質は大きく変わったと感じています。この10年だけをみても、そこに生産者のたゆまぬ努力があるからこそ、いまや素晴らしい品質のコーヒーに日常的にアクセスできるようになったのです。今後もこの進化はさらに続くでしょう。COE(ACE)には感謝の気持ちを伝えたいです。なぜならこの素晴らしいコーヒーが私の人生を豊かなものにしているのですから。コーヒーが私の人生を変えた、そしてそれはCOEのおかげだと言っても決して言い過ぎではないかもしれません。(山本)」
コーヒーの消費者と生産者との距離がどんどん近くなっている今。いろいろな可能性を秘めているこの状況にとてもワクワクしています。Single Oは今後もCOEに参加することで、Fazendas Klemをはじめとするコーヒー生産者のみなさんの想いを受け取り、世界中で展開するクオリティーの新発見に携わっていきます。「コーヒーが世界をより近くする。」山本のこの言葉が私たちSingle Oの想いを表しています。
COEをはじめスペシャルティコーヒーを飲む機会がある時は、ぜひそのコーヒーを作っている生産者の方達にカップを掲げて感謝をしてみてください。彼らは自分たちのコーヒーをつくるプロセス一つ一つに愛情と人生を込めています。彼らの努力なしに、私たちは今この素晴らしいコーヒーを楽しむことはできないのですから。
ラストステージを飾るFazendas Klem, Brazilはコチラから!